J-ASPECT Study

日本におけるくも膜下出血の転帰の全国的な傾向と脳卒中センターの能力が予後に与える影響:レトロスペクティブ・コホートスタディ National trends in the outcomes of subarachnoid haemorrhage and the prognostic influence of stroke centre capability in Japan: retrospective cohort study

AUTHORS

Ryota Kurogi, Akiko Kada, Kuniaki Ogasawara, Kunihiro Nishimura, Takanari Kitazono, Toru Iwama, Yuji Matsumaru, Nobuyuki Sakai, Yoshiaki Shiokawa, Shigeru Miyachi, Satoshi Kuroda, Hiroaki Shimizu, Shinichi Yoshimura, Toshiaki Osato, Nobutaka Horie, Izumi Nagata, Kazuhiko Nozaki, Isao Date, Yoichiro Hashimoto, Haruhiko Hoshino, Hiroyuki Nakase, Hiroharu Kataoka, Tsuyoshi Ohta, Hitoshi Fukuda, Nanako Tamiya, Ai Kurogi, Nice Ren, Ataru Nishimura, Koichi Arimura, Takafumi Shimogawa, Koji Yoshimoto, Daisuke Onozuka, Soshiro Ogata, Akihito Hagihara, Nobuhito Saito, Hajime Arai, Susumu Miyamoto, Teiji Tominaga, Koji Iihara; J-ASPECT Study Collaborators

目的

クリッピング術またはコイリング術を受けたくも膜下出血(SAH)患者の退院時の臨床転帰の全国的な6年間の推移と、包括的脳卒中センター(CSC)の診療能力の時間的推移が患者の転帰に及ぼす影響を検討しました。

デザイン

後方視的研究。

設定

日本国内の脳卒中診療施設631施設。

参加者

J-ASPECT Diagnosis Procedure Combinationデータベースを用いて特定した、緊急入院したSAH患者45,011人。

主要および副次的アウトカム指標

未治療のまま、あるいはクリッピングやコイリングを受けたSAH患者の年間数、院内死亡率、退院時の機能的転帰不良(modified Rankin Scale: 3-6)。各施設の包括的脳卒中センターの診療能力は、妥当性が証明されたスコアリングシステム(CSCスコア:1~25点)を用いて評価しました。

結果

コホート全体では、院内死亡率は経年的に減少しましたが(OR(95%CI):0.97(0.96~0.99))、機能的転帰不良の割合には変化を認めませんでした(1.00(0.98~1.02))。クリッピングを受けた患者の割合は46.6%から38.5%に徐々に減少し、コイリングを受けた患者と未治療の患者の割合はそれぞれ16.9%から22.6%、35.4%から38%に徐々に増加しました。院内死亡率は、コイリングを受けた患者(0.94(0.89~0.98))と未治療の患者(0.93(0.90~0.96))で低下しましたが、クリッピングを受けた患者の院内死亡率には変化を認めませんでした。CSCスコアの改善は、コイリングの実施率の増加(1ポイント上昇あたり、1.14(1.08~1.20))と関連していましたが、治療方法にかかわらず、患者の短期転帰には関連しませんでした。

結論

6年間の傾向として、SAH患者の院内死亡率の低下(転帰の改善に関与)、コイリングの実施率、未治療患者に対する集学的治療の増加が示されました。CSCの能力をさらに高めることで、主にコイリングの実施を増やすことにより、全体的な転帰が改善する可能性があります。現代の血管内治療時代において、動脈瘤の複雑性などの交絡因子がクリッピング患者の転帰に及ぼす影響を明らかにするためには、さらなる研究が必要です。

TOP