J-ASPECT Study

日本における脳梗塞再開通療法の治療の質を測定 Close The Gap - Stroke Measuring quality of care for ischemic stroke treated with acute reperfusion therapy in Japan - the Close The Gap - Stroke -

AUTHORS

Ren N, Nishimura A, Kurogi A, Nishimura K, Matsuo R, Ogasawara K, Hashimoto Y, Higashi T, Sakai N, Toyoda K, Shiokawa Y, Tominaga T, Miyachi S, Kada A, Abe K, Ono K, Matsumizu K, Arimura K, Kitazono T, Miyamoto S, Minematsu K, Iihara K

背景・目的

医療の質(QOC:Quality of Care)をいかに改善するかが、世界的に注目されています。医療の質は、「ストラクチャー指標」(構造指標:集中治療室、専門医数など)、「プロセス指標」(手順指標:ガイドラインに記載された標準的医療の実施など)、「アウトカム指標」(成果指標:死亡率など)の3つによって測ることができます。脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称である脳卒中は、日本でも死因の第3位、要介護原因の第1位となっており、重大な疾患です。急性期脳卒中に対する脳血管内治療は、ステントやカテーテル、血栓回収デバイスなどの進歩により、効果や安全性が向上し、脳梗塞の後遺症を残さなくて済むケースは増えています。本研究ではJ-ASPECT研究に登録されていたDPC情報を活用し、医療の質の算出に必要な情報のみを、参加施設で付加することで、急性期脳卒中の医療の質を、現場の負担を抑えながら計測・収集するプログラムを、世界ではじめて開発しました。

研究手法と成果

2013~2015年に、急性期脳梗塞に対して「再開通療法」(t-PA静注療法、血管内治療による血栓回収療法)を施行した症例を、同データベースから抽出し、参加施設に追加情報の入力を依頼しました。その結果、172施設から8,206症例が登録されました。登録された対象患者のうち、t-PA療法は83.7%、血栓回収療法は34.9%で施行されており、退院時で機能的に自立できる状態であった症例は37.7%に上ることが分かりました。 策定した医療の質のうち、来院から30分以内での脳血管画像の評価や、60分以内でのt-PA投与、退院時の適切なスタチンの投与、深部静脈塞栓症の予防など合計6つの項目で、目標の達成が不十分であることが分かりました。今回開発したDPC情報を活用したプログラムでは、医療の質の測定に必要となる項目のうち6割を、DPCのデータからあらかじめ入力した状態で提供することで、臨床現場での負担を軽減することもできました。また同時に、入力したDPC情報の精度を確認し、9割以上の正確性を有していることがわかりました。

結論

策定した全ての急性期脳梗塞に関連する医療の質を、現場負担の少ない方法で測定できました。脳卒中での医療の質の推移を継続的に評価するとともに、治療結果に関係する指標を明らかにできれば、遵守率のさらなる改善に向けた介入なども検討できるようになります。

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