J-ASPECT Study

日本における2010~2016年の虚血性脳卒中の全国的なアウトカムの傾向および脳卒中センター機能の影響についての展望 National trends in outcomes of ischemic stroke and prognostic influence of stroke center capability in Japan, 2010-2016

AUTHORS

Kada A, Ogasawara K, Kitazono T, Nishimura K, Sakai N, Onozuka D, Shiokawa Y, Miyachi S, Nagata I, Toyoda K, Hashimoto Y, Hasegawa Y, Hoshino H, Yoshimura S, Suzuki M, Tsujino A, Matsuda S, Kurogi R, Kurogi A, Ren N, Nishimura A, Arimura K, Hagihara A, Tominaga T, Kayama T, Arai H, Suzuki N, Miyamoto S, Ogawa A, Iihara K; J-ASPECT Study Collaborators

目的・背景

包括的脳卒中センター機能の経時的な推移や、急性虚血性脳卒中患者への影響に関する全国レベルの情報は限られています。このため私たちは、日本における急性虚血性脳卒中患者の退院時転帰の傾向を調べ、包括的脳卒中センター機能の経時的変化がそれにどうかかわっているかを分析することにしました。

研究手法と成果

この後ろ向き研究では、J-ASPECTのDPCデータベースを使用し、2010~ 2016年の間に650の施設に入院した372,978人の急性虚血性脳卒中患者を対象としました。患者のアウトカムはrt-PAの投与、機械的血栓回収術実施の有無によっても調査しました。
施設の包括的脳卒中センター機能は、2010年と2014年に検証済みのスコアリングシステム(CSCスコア:1〜25ポイント)を使用して評価しました。経時的なCSCスコアの変化が院内死亡率と退院時転帰不良率(mRS:3-6)に及ぼす影響は、階層的ロジスティック回帰モデルを使用して分析しました。
経時的にみると、入院時の脳卒中の重症度は低下していましたが、年齢の中央値、男女の割合、および併存疾患の割合に変化はありませんでした。 CSCスコアの中央値は16ポイントから17ポイントに改善しました。 年齢、性別、併存疾患、入院時の意識レベル、および施設のCSCスコアを調整した上で変化を見ると、院内死亡率は7.6%から5.0%へ、退院時の転帰不良の割合は48.7%から43.1%へとそれぞれ低下していました。 2010年から2014年のCSCスコアの改善は、院内死亡率の低下、転帰不良割合の低下、rt-PA投与率、機械的血栓回収術実施割合にそれぞれ独立して関連しており、オッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ0.97(0.95-0.99)、0.97(0.95-0.998)、1.07(1.04-1.10)、1.21(1.14-1.28)でした。

結論

この全国的な研究は、急性虚血性脳卒中患者のアウトカム改善とrt-PA投与および機械的血栓回収術の実施の増加についての6年間の傾向を明らかにしました。 脳卒中の重症度が低くなったことに加えて、包括的脳卒中センター機能が改善されていることも、こうした傾向に関連する独立した要因であり、急性期脳卒中治療の予後を左右する指標としての包括的脳卒中センター機能の重要性が明らかになりました。

TOP