外傷性脳損傷の転帰に対する年齢の影響:日本の全国調査(J-ASPECT Study-外傷性脳損傷)からの所見 The Influence of Age on the Outcomes of Traumatic Brain Injury: Findings from a Japanese Nationwide Survey (J-ASPECT Study-Traumatic Brain Injury)
AUTHORS
Yamagami K, Kurogi R, Kurogi A, Nishimura K, Onozuka D, Ren N, Kada A, Nishimura A, Arimura K, Ido K, Mizoguchi M, Sakamoto T, Kayama T, Suzuki M, Arai H, Hagihara A, Iihara K; J-ASPECT Study Collaborators
目的・背景
外傷性脳損傷(TBI)の患者についての疫学的調査は、急速な高齢化進展の結果として、ここ数十年で劇的に変化しました。私たちはTBI患者の転帰についての年齢の影響を評価し、高齢患者におけるTBIの院内死亡率を予測する因子の特定を試みました。
研究手法と成果
私たちは全国的なデータベースを使用して、TBIの5,651人の患者のデータを分析しました。 人口構成、入院時の神経損傷レベル、画像診断所見、全身的な合併症の有病率、入院期間、院内死亡率、在宅復帰率について単変量解析を実施して高齢者と非高齢者を比較しました。また、高齢患者の院内死亡率を予測する因子を特定するために多変量解析を用いた分析を行いました。
全体的に見ると、院内死亡率は高齢者で有意に高い結果でした(非高齢者12.8% vs 高齢者19.3% p値< 0.001 )。高齢患者の死亡率は、軽症のTBI患者では入院7日目以降が有意に高く、中等症および重症のTBI患者では入院直後が有意に高くなっています。高齢のTBI患者の院内死亡率に関連する各因子のオッズ比は、年齢が1.62(p値 = 0.024)、男性であることが1.30(p値 = 0.004)、 入院時JCSが5.95(p値 < 0.001)、および急性硬膜下血腫の発症が1.89(p値 < 0.001)という結果でした。
結論
高齢のTBI患者の院内死亡率は有意に高いこと、および軽症でも入院後日数が経過してからの院内死亡率が高いことがわかりました。 入院時の意識レベルは、高齢患者の院内死亡率に影響する最も重要な予測因子でした。