直接経口抗凝固薬またはワルファリンに起因する脳内出血の比較 Comparing intracerebral hemorrhages associated with direct oral anticoagulants or warfarin
AUTHORS
Kurogi R, Nishimura K, Nakai M, Kada A, Kamitani S, Nakagawara J, Toyoda K, Ogasawara K, Ono J, Shiokawa Y, Aruga T, Miyachi S, Nagata I, Matsuda S, Yoshimura S, Okuchi K, Suzuki A, Nakamura F, Onozuka D, Ido K, Kurogi A, Mukae N, Nishimura A, Arimura K, Kitazono T, Hagihara A, Iihara K; J-ASPECT Study Collaborators
目的・背景
この横断的調査では、日本全国規模の大規模な退院患者データベースを分析することにより、直接経口抗凝固薬(DOAC)に起因する非外傷性脳内出血(ICH)の特徴とアウトカムを明らかにすることを目的としています。
研究手法と成果
この調査では、2010年4月~2015年3月の間に日本国内の621施設で抗凝固薬を服用中にICHを発症し、緊急入院した2,245人(DOAC:227人、ワルファリン:2,018人)の患者のデータを対象として、DOAC服用患者とワルファリン服用患者それぞれについて、患者背景、ICHの重症度、入院時の抗血小板療法実施、血腫除去手術実施、拮抗薬投与、死亡率、退院時mRSなどについて比較しました。
DOACに起因するICHは、中等度または重度の意識障害を引き起こす可能性が低く(DOACに起因するICH:31.3%、ワルファリンに起因するICH:39.4%、 p = 0.002)、外科的な血腫除去が必要な割合も低い(DOACに起因するICH:5.3%、ワルファリンに起因するICH:9.9%; p = 0.024)という結果が単変量解析で示されました。傾向スコア分析で入院中の死亡率をDOACに起因するICHの患者と、ワルファリンに起因するICH患者とを比較した入院当日死亡オッズ比は4.96(p値 = 0.005)、入院7日以内死亡のオッズ比が2.29(p値 = 0.037)、および入院中死亡のオッズ比が1.96(p値 = 0.039)となっており、DOACに起因するICHの死亡率が有意に低いことが明らかになりました。
結論
この全国的な研究により、DOAC服用患者の方がワルファリン服用患者に比べて入院時点での重症度が低く、死亡率も低い傾向にあることから、出血の度合いが少なく血腫が大きいケースも少ないことが推察されます。