治療法がクモ膜下出血患者のアウトカムに与える影響について:日本全国の研究(J-ASPECT Study) Effect of treatment modality on in-hospital outcome in patients with subarachnoid hemorrhage: a nationwide study in Japan (J-ASPECT Study)
AUTHORS
Kurogi R, Kada A, Nishimura K, Kamitani S, Nishimura A, Sayama T, Nakagawara J, Toyoda K, Ogasawara K, Ono J, Shiokawa Y, Aruga T, Miyachi S, Nagata I, Matsuda S, Yoshimura S, Okuchi K, Suzuki A, Nakamura F, Onozuka D, Hagihara A, Iihara K; J-ASPECT Study Collaborators
目的・背景
クモ膜下出血(SAH)後の患者のアウトカム(退院時転帰)は、治療拠点によって均一ではないことがわかっていますが、SAHに対するクリッピング術とコイル塞栓術の相対的な利点は不明なままです。私たちは、包括的脳卒中センター(CSC)機能を備えた多様な病院を網羅する大規模で全国的な退院患者データベースを使用して、これらの治療法の間で患者の転帰を比較することにしました。
研究手法と成果
調査の対象としたのは、国内の393施設に2012年4月~2013年3月の1年間に緊急入院したSAH患者5,214人(うちクリッピング術実施患者3,624人、コイル塞栓術実施患者1,590人)です。院内死亡率、mRSスコア、脳梗塞 、合併症、入院期間、および医療費について、混合モデルを用いてして患者レベルや病院レベルの特性を調整した上で、クリッピング術実施群とコイル塞栓術実施群を比較しました。
コイル塞栓術を受けた患者は、クリッピング術を受けた患者に比べて院内死亡率が有意に高く(12.4% vs 8.7%、オッズ比 1.3)、入院期間の中央値も短い(32.0 vs 37.0日、p値 < 0.001)ことがわかりました。一方、mRSスコアが3〜6の割合は46.4% vs 42.9%、退院患者の医療費の中央値は、US$35,700 vs US$36,700で、有意な差はみられませんでした。これらの結果は、病院関連の共変量としてCSC機能をさらに調整を行っても変化しませんでした。
結論
コイル塞栓術を選択する症例が増加しているにもかかわらず、クリッピング術は依然としてSAH治療の主流です。 2012年度の日本国内においては、CSCの機能に関係なく、クリッピング術はコイル塞栓術に比べて、院内死亡や身体機能障害、医療費、入院期間の面で優位でしたが、測定されていない交絡因子の影響を判断するには、さらなる研究が必要と考えられます。